太陽が愛を照らす(短編集)
恋愛履歴


 初恋は幼稚園のとき。たんぽぽ組のけんたくん。
 初めて誰かと付き合ったのは高校一年生のとき。同じクラスのたくやくん。
 高校三年生のときに付き合ったゆうじくんには、わたしのファーストキスをあげた。

 わたしにもこういう恋愛履歴があるように、潤くんにも恋愛履歴がある。
 それは分かっているけれど、それを考えたらなんだか胸がもやもやした。

 今彼と一緒にいるのはわたしなのに、昔彼と一緒にいたひとたちに嫉妬する。無意味な嫉妬だと分かっているのに、その事実は、今日もわたしを憂鬱にさせる。



「なに怒ってんの?」

 わたしのベッドを占領し、床に座るわたしを見下ろしながら、ひげ面の彼が言う。

「別に。怒ってない」

「トーンもオーラも怒ってるじゃん」

「怒ってないって」

 ふうん、と間延びした返事をして、潤くんはごろんと仰向けになった。わたしのベッドだというのに寛ぎすぎだ。

「なんか、する?」

「……なんかって?」

「トーク」

「……しない」

「まじで?」

「潤くんのトークは身体使うやつでしょ」

「そりゃあ」

「今日はしない」

 言うと彼は拗ねた様子で口を尖らせ、足下のタオルケットを引っ張り上げる。それにくるまり、すっかり寝る体勢に入ってしまった。いや、だからわたしのベッド……。

 そこに合流する気になれず、ベッドに背を向けため息を吐くと「なあ」と彼の声がした。

「なあってば」

 それでも返事をせずにいると「なあなあなあなあ」と。怒涛のなあ攻撃。びっくりするほどうるさい。

「なんで怒ってんのか言ってくんないと、仲直りもできねえじゃん」

「だから怒ってないんだってば」

 勝手に無意味な嫉妬をして、憂鬱になっている。ただそれだけだ。




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