家族の絆
 退院後は、親父さん達と一緒に住むようになった。その頃、浜松の実の父の戸籍からユキの除籍願い出されていたのを親父さんが偶然知って、直ぐに、親父さん達と養子縁組をして、戸籍もこちらに移してしまった。
 親父さんはユキのために奔走し、精神的にも気苦労をしたようだった。
『実の娘を見捨てる親があるものか!』と言って、ずっと怒っていたようだ。それが直接の原因ということはないと思うが、ユキが親父さんの家に住むようになってから1年半程して、親父さんは亡くなってしまった。
「それはいつのことなんだい?」
祐一は、つい、口を挟んだ。
「10月19日。2年前の10月19日」
「そうか、帰任してから既に、1年半も経っていた時なんだ」
どうして、もっと早く親父さんに会おうと思わなかったのかと、祐一には悔やまれてならなかった。それと、ユキが自殺を図った時にも既に日本には帰っていたのだと思った。
「ところがすごいのよ!」
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