君の瞳に映る世界


「多くの本を書けば、それは僕を広く知ってもらえる事になる。

 そうすれば……そこには、僕が生きた軌跡が残る。

 だから僕は、作家になりたいんだ」




その時の横顔は、ずっと忘れないと思う。




今まで会ってきた、どんな人よりも、今まで見てきた、どんなものよりも




輝いていたから。




そんな彼から、目が離せなかった。




ドキドキと、ハッキリ分かるほど強く脈打つ心臓。




熱く、火照る体。




あ、この感じ……




私、知ってるかもしれない。




だけど、認めたくない。




認めたら、いけない気がする……




「素敵な、夢だね」




「そうだね、お互いね」




そう言って、逢坂くんは私に向かって微笑んだ。




私も、モヤモヤする気持ちを抱えながら、彼に笑いかけた。
















だけど、私はこの時、気付かなかった。




私達に残された時間は、あとわずかだったということに。




< 80 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop