春、さくら、君を想うナミダ。[完]
「さくらー、あのさぁ……」
彼には、クラスの女子たちの声なんか全く聞こえていないようで、
ニコニコしながらあたしのほうに近づいてくる。
女子たちの冷ややかな視線が、あたしは怖くてたまらなかった。
あたしは彼を避けるように、走って教室を出ていく。
「え?あ、さくら……」
後ろから彼の声が聞こえたけど、あたしは振り向くことさえできなかった。
「さくらっ」
大きな声で叫ぶ彼を無視して、あたしは廊下を走っていく。
……ごめんなさい。
逃げたりしてごめんなさい。
話しかけてくれたのは、入学式以来だったのに。
本当はあたしも話がしたかった。
だけど、女子たちからあんなふうに言われるなんて思ってなかった。
友達を作るどころか、一気に嫌われてしまった。
女子たちの前で、人気がある彼と話す勇気なんてない。
あの場にいるのが、怖かった。
うちのクラス……怖いよ。
もう帰りたい。
家に帰りたいよ。
廊下を走りながら、あたしはあふれてくる涙をぬぐう。