春、さくら、君を想うナミダ。[完]
***
ハルくんの彼女になって、2ヶ月が経っていた。
10月に入ると、町の景色も日ごとに秋めいてきて、
田んぼには一面、黄金色の稲穂が広がっている。
空は高く澄み渡り、色づく木の葉を涼しい風がさわさわと揺らした。
碧く静かな湖にも、落ち葉が浮かんでいる。
放課後、
いつものように彼とふたりで、湖畔のベンチで過ごしていた。
ベンチに座るあたしの膝の上に、頭を乗せて瞳を閉じている彼。
彼のサラサラな茶色い髪に指でそっと触れると、
瞳を開けた彼は、下からあたしを見つめた。
「さくら」
「ん?」
「俺たちのこと、いつまでヒミツにすればいい?」