あ、あ、あ愛してる
胸に迫る「ROSE」の歌詞を噛み締めながら、精一杯に思いを込めて歌った。

溢れる涙で部長の指揮も客席も滲んで見えない。

和音くんの奏でる「ROSE」のピアノ伴奏が切なくて暖かくて、胸が痛かった。

水を打ったような静けさの中で、あたしたちの歌声と和音くんのピアノが会場に響いていた。

歌詞を歌い終え、和音くんのピアノ伴奏が最後の1音を鳴らし終えた瞬間、会場から怒涛のような拍手が沸き上がった。

部長が客席に向かって1礼し、舞台袖に向かおうとしたあたしの耳に、鈍い音が聞こえた。

悲鳴が客席から幾つも重なり、恐る恐る音のした方を振り返る。

「Alice!!」

和音くんがピアノの側に倒れていた。

足を止め、立ち尽くし動かない部員たちの列を掻き分け、和音くんに駆け寄った。

コンクールスタッフが数人、壇上に上がって、和音くんを抱き起こし、声を掛けている。

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