あ、あ、あ愛してる
火照っていた和音くんの体が心配で堪らなかった。

和音くんの体調不良を知らない部長の指揮は、和音くんの伴奏に気持ちが乗っているのか、いつもの数倍もキレがいい。

本番に強い人だと思う。

普段はボーとしていて、昼行灯のような人なのにやるときはやるんだなと思う。

あたしの隣で愛美も懸命に歌っている。

和音くんは座っていることさえできず、あたしの膝に横たえていたあんな体調で、あたしたちコーラス部員を鼓舞し続けている。

すごい気迫でピアノを弾いていると思うと、涙が溢れて止まらなかった。

「ROSE」を歌い出す前の和音くんコールが、嘘だったみたいに客席が静まり返り、痛いほどの緊張感が伝わってくる。

「ROSE」の歌詞を今ほど深く感じたことはないと思う。

――愛は花 命の花 どんなに辛い冬の寒さでも 雪の下から種は春に花を咲かせる

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