あ、あ、あ愛してる
ロビーで和音くんの演奏を聴いていた学生や一般の人たちがざわつき「和音、歌って」「早く元気になって」など、和音くんに向かって叫んでいた。

和音くんに駆け寄って、和音くんに声を掛け、和音くんの手を握りしめる人もいた。

和音くんは何も言わずに微笑んで、画用紙を広げペンを走らせ、胸の前で彼らに向けた。

――必ず戻ってきます。もう1度、歌えるようになって戻ってきます

しっかりした文字だった。

和音くんは画用紙を捲り、ペンを走らせ、あたしたちの方に向けた。

――ちゃんと聴いてるから思い切り歌え。これ以上頑張れないと言える最高の歌声を聞かせて。頑張れ

あたしは大きく頷いた。

副部長が「さあ、優勝するよ」と発破を掛け、あたしたちは大ホールの舞台裏に向かう。

和音くんはあたしたちを手を振って、見えなくなるまでずっと見守っていた。

あたしの頭にはまだ和音くんのヴァイオリンの音色が響いていた。

「ROSE」の旋律と共に和音くんの「ROSE」の歌声が鳴っていた。
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