あ、あ、あ愛してる
喋ろうとすると、吃音が気になり余計に気持ちが萎縮し、さらに言葉がスムーズに出ない。


「バンドで歌っているのとは違う印象でしたが、いい演奏を聴かせていただきました」

『ああありがとうご――ざいまます』

席に戻ろとするのに体が震え、自分の体ではないような感覚だった。

緊張で体が強張り息切れと動悸がし、呼吸が上手くできない。

「合唱コンクールの県大会はピアノ伴奏をするんですか」


「……ははい」

次の質問を投げかけられる前に退室したいと思い、会見前に言われていた通り、咳払いをした。

マネジャーが俺の目を見て頷き、マイクを握りしめる。


「すみません。綿貫の体調が悪いので会見を打ち切らせていただきます」

やっとの思いで席まで戻り、息苦しさで拓斗の腕にしがみついた。

過呼吸と眩暈で立っていられず、倒れかかる俺の体を拓斗が支えた。

苦情の声と罵声が、ざわめきに変わった。
< 94 / 209 >

この作品をシェア

pagetop