真夜中のアリス

息が続かなくて凄く苦しい、けれどもそれ以上に待ち焦がれている希望がそこにあると思えば苦しいだなんて言える筈もない。
色とりどりの薔薇と仄かに馨る懐かしい金木犀の香り。馳せる気持ちがどうしても抑えることが出来ない。

「….いた……っ!あ、朱鳥くん………!!!」

その姿は、あの日と何ら変わりなく少し長めの痛みのない黒髪と穏やかな瞳。そして儚げな微笑みと彼を主張する金木犀の匂い。
全てがあの日のままで、何も変わらない出で立ちと眼差しで悠然と立ち尽くしていた。

「る、瑠衣ちゃ…」

彼が言い切る前に懐に入り広い背に手を回して力の限り、ぎゅっと抱きしめる。
懐かしくて大好きな朱鳥くんの薫り、金木犀の匂い。鼻腔を突き抜けるそれに、涙腺が更に緩んでポロポロと涙がまた溢れ出す。
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