【続】興味があるなら恋をしよう
「あの…坂本さん…」

「大丈夫だったか?…困らされてるみたいだったから」

…。

手を引かれ、中庭のある辺りまで来た。
隅にある長椅子は、凹んだ壁にはめ込まれる形で置かれていた。
取り敢えず一息、並んで腰掛けた。
みんなの居る部屋からは遮られていて見えないようだ。

「大丈夫です。ちょっとびっくりしましたけど。
まさか、あんな風に思われていたとは思わなかったので」

まるで、ただ勢いで、私と坂本さんが身体の関係をもった仲かのように言われるなんて…。
何だか、嫌…。
辞めて今更なのに、そんな話を持ち出すなんて…。
余程、印象深くでも残っていたのだろうか。

「悪い…。俺が曖昧にしてたから。あの日、妙な言い回しをするとは思ったんだけど、単なる誤解だと思って済ませていたんだ。
わざとからかって話してるだけだと思ってたから、強く否定もしなかったんだ。それを、まるで藍原が浮気でもしたみたいに…。何だか、悪い、ごめんな。きちんとしておくべきだった」

そんな事…。坂本さんが悪いという事でも無いと思う。
からかったと言われれば、からかわれただけだから。

「大丈夫です。何も無いって言いましたから」

あ、…でも。今、こうして、坂本さんが助けるように割り込んだ事で、疑いはかかったままになったのでは。
…タイミング良く現れるんだもの…。
また思い込まれてしまったかも知れない。

「藍原」

「あ、はい」

「このまま抜けよう」

「え」

「具合悪いって言って来たから、居なくなったって帰ったと思うさ」

「え、でも…坂本さんは居なくちゃ…」

「こんな時は大友さんがほぼメインだよ。俺は来た方で、大友さんは辞めた方だろ?
だったらお疲れ様でしたの方が大事だよ。最初から自由参加なんだし、居なくなっても問題無い。出よう」

あ、でも…。

「……課長か?」
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