【続】興味があるなら恋をしよう
今になってって感じ、このタイミングで?
大友さんと坂本さんの送迎会をすることになった。
退職されてから自営の仕事が落ち着かない内は難しいという事で、随分と経ってからの事になった。

飲み会自体が凄く久し振りの事。
土曜の夜に自由参加という形にはなったが、課のほとんどの人間が参加するようだった。
人徳かな。…どちらも。

飲みの席だと、また…久し振りに恋人の話を言われてしまうのだろうか。
お酒がすすんでくると、話は色々とメインを外れ脱線してくるもの。
様子を見て退席しよう。

そう思ってバッグを手に、上がり框に足を降ろした時だった。

「おい、藍原〜、どうなんだ?」

「え」

大友さんから思いもよらず声を掛けられた。
パンプスに足を入れ立ち上がった。
どうなんだって、一体、何がどうだって事だろう。…元気かって事?

「元気でしたよ?大友さんも変わりなく…」

手を顔の前で振る。違う違うって意味だ。

「いや、坂本だよ」

「え?」

「また〜。…内緒だろ?俺さ、何となくピンときてたけど誰にもなんも言ってないから。もめると面倒だし、な?どうにかなっちゃったんじゃなかったの?」

興味津々なその顔は、何だか嫌なモノを予感させた。

「え…、大友さん…あの、何の事だかさっぱり…」

少しキョロキョロして周りを見た。
誰も居ない。

「またまた〜。あれ、あの日だよ。
坂本が大遅刻して、…そう、藍原が休んだ日だ。その日の事だよ。いや、厳密には前日から?って事になるのか。フフン」

思い出しながら話しているように見えるのは酔っているからだろうか。

…。あの日は…。

「そんな…、何も無いですよ?私が会社を休む連絡を坂本さんにお願いしただけですから」

どうにかなんて…なってなんか無い。本当に何もなかったんだから。

「ふ〜ん。そうなんだ。…ふ〜ん。…そうなの?ちょっとくらい…別の男もいいかもって、思ったんじゃないの?」

…少し、しつこい。どうしても確かめたかったのかも知れないが、無責任な事を言っても、今は社員では無くなったから平気なのだろうか。あー、誤解の上に誤解だ。

「何も無いです、本当に」

「俺はてっきりね…二人は…」

「あれ〜藍原。飲み過ぎたって言ってただろ?大丈夫か?」

え?あ、え?
いつ現れたの?いつから居たの?

「少し、涼みに出るか」

「え」

「いいから、合わせろ」

囁くと腕を掴み、通路を進み始めた。

「あ、は、はい。すみません、大友さん。失礼します」

「あ?」

フ、な〜んだ。やっぱり…仲良さ気じゃないか。
計ったようにピンチには坂本が居るじゃないか。
別に誤魔化さなくたっていいのに。何かあったって別にいいじゃないか…?…あ?
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