【続】興味があるなら恋をしよう
「お父さん、お母さん、今から私の話す事を信じて頂きたいのですが」

俺は、これからも何も変わる事無く、藍原の事が好きで、結婚も考えている事を話し、今日から二人で暮らす事を告げた。

いや、それなら、聞いている話と何も変わらない話だ、そんな顔で聞いてくれていた。
当たり前だ、俺の思いに変わりは無いのだから。
…要はここからなんだ。

もしかしたら、俺ではない人間が、挨拶に来る事があるかも知れないと言った。
まさに、狐につままれた話だ。
えっと、それはどういう事かねと、当然聞かれた。

娘さんの事を好きな男性が居るのです。
娘さんも、その男性の事が好きなんです。

もう、こんな事を言っている段階で、俺って何なんだろうって、なってしまう。

横取りしたのか。そうでないのなら、それこそ、本命が挨拶に来るまでの繋ぎかって。
だったら、付き合ってるってやっぱり嘘じゃないかって。思うだろう。

だけど、お父さんは解っていた。

やはり、紬がどこか定まっていないように見えたのは本当だったんだな、と言った。その事があるからと。
しかし、勘違いして欲しくなくて、俺は念を押した。

「私は娘さんと結婚したいと思っています。例え、娘さんがぐらついたとしても、私には娘さんしか居ませんから。娘さんも、私でいいと、そう決めてくれています」

「終わってるのかね、その男性とは。気持ちが割り切れない時期も当然あるでしょう。…結婚結婚と言い過ぎたせいか。気持ちが充分おさまってからでも良かったのでは。
決めた…そう意思を固めたのなら、どうして、あの子は…真っ直ぐに一条さんに飛び込まないんだ…迷いを見せてはいけない。まだ、無理なのでは?…貴方の娘を思ってくれる気持ちは嬉しいが」

呟くように言われた。

「有難うございます。言葉では説明し辛い事もあります。
…大変悔しいのですが、運命とでも言うんでしょうか。…はぁ、…すいません。
理屈では無く、どうしても不思議と引かれ合ってしまう相手って、居るんですよね…。娘さんにとって、その男性がそういう相手なんです」

「ゔ〜ん…しかしだな。…それは。そうだとしても…ゔ〜ん。いい加減過ぎやしないか?
あっちも好き、でも結婚は君となんて…そんな自分勝手な……そういうのはやはりいつか拗れるんじゃないのかな。無理なんじゃ無いかな、結婚は。
あの子の気持ちが不安定過ぎる…それが、ずっと続いたとしたら…疑いたくならないかね?娘の事を。信じられるかね?」

唸りたくなる気持ちは解る。
俺だって、だ。だったら何故その男にしないんだと思うだろう。…俺が身を引けばいい事でもある。…。そうなんだ。


…私には解るわ。
女だから、という訳では無いけれど。

だけど、二人を前にして、言えない。紬の代弁になってしまってもいけないから。

好きな人。その人は恐いくらい好きな人だ、って。
壊してしまいたく無い、失いたく無いから、好きでもどうしようもない人だと。
どこかで繋がっているんじゃないかと思える人。

一条さん、貴方だって特別な人ですよ。
何もかも、全て引っくるめて、大きく包んで愛そうとしてくれる人。
貴方とだったらきっと、紬はずっと幸せで居られる。
…何だか紬に妬けてしまうわ。
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