【続】興味があるなら恋をしよう
「熱でも出たかな?」

顔、赤いのかな…。

「どうやら、ご近所さんでも無いようだ。
こんな男前の患者さんはうちには居ないし…」

「あ、すみません。怪しい者ではありません。
…自分で言う人物は怪しいのか。怪しいかどうかは相手が決める事か。
あの…」

人の家を訪ねて来てウロウロしてるんだから、怪しいと言えば怪しいんだ。

「フ…。この近くに私の幼なじみの家があるんだよ。
あー、私はずっとしんちゃんなんて呼ばれてる、その子にね」

「…は、あ。えっ?」

「そこにはお母さんによく似た、綺麗な娘さんが居る。
今はここには住んでいないけどね。
勤務先に近いところに住んでるようなんだ」

「は、い…」

どういうつもりでこんな話を俺にしてるんだ…。

「少し前に熱が出たって、慌てて来たんだよ。
先生!インフルエンザじゃないですよね、風邪ですよね。大事な人に移したかも知れない、大変、調べてっ、てね。
フフ。そりゃあ、もう、必死だったよ。
まあ、結果はただの風邪だったけどね」

「あっ」

それって、藍原の事なんじゃ…。

「んん。私の幼なじみの家はね、そこを曲がって真っ直ぐ行くと、コンビニが見えて来る。
その横の通りを入って行けば見えてくるよ。
…表札がある。
少し探して見るといい。
あー、患者さんの事は言って無い。あくまで私の幼なじみの話だ。
今は一人で居るはずだ」

「え、あの、どうして…」

「…私は何でも知っている。あの子の事はずっと見ているからね」

「あの…」

「余計な話が過ぎたかな…。バレたら叱られるかな」

頭を掻いている。

「あの、有難うございました」

「いいや、世間話のようなものだ。
君が…来るかも知れないって、聞いてたんだ、恵利から」

え。…一体この人は…。
とにかく頭を下げて、クリニックを後にした。

この日、人が見たら不審がるような事をしている俺とは対照的に、藍原は課長の姪子さんと楽しく過ごしていたなんて、俺は知らなかった。
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