【続】興味があるなら恋をしよう
★☆、★

やはり、この部屋はただの倉庫とほぼ同じ状態なのだと思った。
荷物とベッドはまだ置いてある。完全に課長の部屋で暮らしてはいない。
朝帰って来て身支度を整え、改めて出勤する。
そんな、不便とも言える事をし続けているんだ。

何の為だ、と思いたくなる…。それは…意味のある事なのか。…何故いつまでもこんな事…。
家賃を払ってしまっているからか。
そんなものは、本来なんの関係も無いだろう。
割り切れないような事をしている藍原に、課長は苛立ちは感じ無いのだろうか。

渡されたままの鍵。俺は…今となっては持っている意味は無い。
ベッドの処分を引き受けたから、その時だけあればいいだけだ。ベッドの処分だって俺が関与するのはおかしい。
良くない事は解っている。
こんなモノを持っている事がそもそも遣る瀬無い。
思いを断ち切れず引き摺る元になるんだ。



「藍原、これ」

「はい」

「急ぎじゃないけど、よく目を通してシアンしてくれ」

「はい」

珍しい。最近こんな風にして声を掛けられる事は無かった。
薄いファイル。
数枚挟み込まれた書類にそれはあった。書いた文字が目立たぬよう選ばれた気がした。
濃いめの青い付箋紙。

【預かったままの鍵は30日にドアポストに入れておく。月末じゃないからな】

…つまり、ベッドは30日にはもう始末されるという事で。最後の一日は、部屋に無いという事になる。そうよね。

…よく…『シアン』してくれ。シアン…思案……試案?……私案。
取り敢えず、書類は急ぎの物では無い事は確か。
よく考えなくてはいけないのは、この付箋紙に書かれた文章という事かしら。
私、この意味を読み切れるだろうか…。
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