ハロー、マイセクレタリー!

「いってらっしゃいませ」
「「いってきまーす」」

玄関では、毎朝、家政婦さん数名が並んで僕たちを待っている。少し仰々しいそのお見送りに、二人揃って挨拶を返すのが日課だ。

学校までは、バスで20分ほどの道程だ。
通い慣れたバス停までの道を並んで歩きながら、僕たちは会話を続ける。

「来週はサミットだけど、奏はウチに泊まりに来るの?」
「…どうかな?僕はまだ聞いてないけど。来月のG20の準備で、今、母さんは忙しいみたいだし」
「あの、いつもケバいドレス着てるおばちゃんのせいでしょ?なんであんなに太ってて、ウチのお母さんと張り合おうとするかなー?」
「結依子(ゆいこ)、それ以上は口を慎んだ方がいい。一歩間違えば日本がエネルギー不足に陥る」
「誰も聞いてないわよ、小学生の雑談なんて」

端から見れば小学生が他愛もない雑談をしているようにしか見えないだろう。だけど、僕らの日常会話にはデリケートな国際関係や、小難しい経済用語なんかが顔を覗かせる。とても普通の小学生が使うような言葉ではない。

それもそのはず。
僕たちは…いや、隣に並ぶ彼女は、普通の小学生ではないからだ。
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