ハロー、マイセクレタリー!

「それにしても、支持率落ちないね」
「当ったり前でしょう?むしろ、これからもっと上がるわよ」

軽々しく言っているが、本人はその偉大さをどこまで理解しているのか。
高柳征太郎(たかやなぎせいたろう)が首相に就任してから、早半年。これほどまでに高い内閣支持率を長期に渡って維持しているのは、前代未聞のことだ。
それを、当たり前だと笑いながら、彼女は得意げに続ける。

「お父さん、元からセンスあるし。何と言っても、優秀な秘書と最強のファーストレディーが付いてるしね」

父親譲りの、威風堂々とした佇まいと清々しいほどに潔い発言には、生来の政治センスを感じる。
母親譲りの、美しく整った顔で微笑めば、見慣れた筈の僕でさえも思わずドキリとするくらいだ。

そう、何を隠そう。
僕の隣を、可憐な笑顔を振りまきながら、背筋をピンと伸ばして歩く彼女こそ、この国の現・内閣総理大臣の長女──高柳結依子(たかやなぎゆいこ)。そこら辺の子役タレントを軽く蹴散らすくらいには、そこそこ有名な小学生である。

そして、そんな人気絶大の総理大臣の親友で、秘書官を務めているのが、大木透(おおきとおる)──僕の父親だ。
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