ハロー、マイセクレタリー!

「瞳ちゃんが泊まってくれないと、また大川さんが泊まるって言い出すからさ」
「大川さんも、心配なんだよ」
「それは分かるけど。大川さん、とにかく早く寝ろとか、女の子はおしとやかにとか、あれこれうるさいんだもん」
「まあ、大人しく聞いておきなよ」
「お母さんもそう言うのよね」
「真依子ちゃんは、大川さんに絶大な信頼を置いてるからね」

お互いの母親のことを、真依子ちゃん、瞳ちゃんと呼びあう。それは、僕らが生まれたときから、まるで家族のように育てられたせいだ(ちなみに互いの父親のことは君付けで呼んでいる。昔からの習慣とはいえ、現首相を征太郎君と呼ぶのは恐れ多くて、僕の方だけは今は呼ぶのを控えているけれど)。
そうなったのは、秘書を務める父親が何かと便利だからと、高柳家から徒歩数分の場所にあるマンションに僕たちを住まわせているからだけではない(ちなみに同じ理由で僕と結依子は同じ私立の小学校に通っている)。
僕の母親の大木瞳(おおきひとみ)と、結依子の母親の高柳真依子(たかやなぎまいこ)もまた、高校生の頃からの親友だった。二人の仲は、互いに結婚しても、真依子ちゃんがファーストレディーになっても変わることなく、今日まで固い友情で結ばれている。
仕事や夫の用事で家を空けることの多い真依子ちゃんに代わって、僕と母さんは頻繁に高柳家に泊まっているし、美容師でもある母さんは、時に真依子ちゃんのヘアメイクやスタイリストを務めることもある。
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