恋する5秒前~無愛想なキミと~


「なぁ、環」


「……なに?」


「飯食った後、どこか行きたい所はあるか?」


「ううん、特にないけど。桜井君は行きたい所があるの?」


「うん、まあ。俺も環に見せたい物があるんだけど、ここからちょっと遠いけど良いか?」


「遠いってどのくらい?」


「ここから電車に乗って一時間くらい」


「一時間!」


「帰りは家まで送るから心配すんな」


「あ、うん。ありがと。じゃあ、そこへ連れてってくれる?」


「じゃあ、決まりな!飯食ったら行くぞ」


「うん」


私達は残りのピラフを平らげると電車に乗るために、急いでお店を飛び出した。


駅に着いて、電車に飛び乗る。


電車に揺られて一時間後。


「着いたな」


駅のホームに降り立つと周りの景色を眺めた。


「ここは……?」


周りは山々に囲まれた山間の町並み。


「環、ここから少し歩くぞ」


「あ、歩くの?」


「あぁ、15分くらいだけどな」


駅の改札を出て、先を歩く彼の後を付いていく。


桜井君ったら、どこへ連れて行く気だろう?


何も言わずに歩く彼の後姿を見つめながら、私は不安な気持ちでいっぱいになっていた。

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