恋する5秒前~無愛想なキミと~
「そんな顔をすんなって。後、少しで着くからさ」
「後少しって、どこに?」
別に変な所に連れて行く訳じゃねぇから、心配すんな……と言って苦笑いをする桜井君。
心配すんなって言われてもなぁ。
でも、桜井君の言葉を信じて着いて行くしかないのかな?
「うん、分かった。後少しでしょ?行こうよ」
「……ん」
桜井君は私の手をギュッと握り直すと歩き出した。
無言のまま歩く私達。
数分後。
「環、俺がお前に見せたかったのはここなんだ」
「わあっ!すごい……」
私達の目の前に現れたのは、河津桜が山一面に咲き乱れている場所。
ピンク色をした山が幾重にも連なっている。
「すごい、綺麗」
壮大な景色に圧倒されてしまった私は、月並みの言葉しか出てこない。
「こんなに綺麗な桜、私は今まで見たこともないよ。桜井君はどうやって知ったの?」
「ここ?」
「うん」
「ここは、樹里達から教わったんだ。桜が綺麗に咲いてる所があるから、お前を連れて行ってみたらってさ」
そう言いながら照れてるのか、頭をくしゃくしゃっと掻いている桜井君。