恋する5秒前~無愛想なキミと~

「ここへ来るまでの間にさ、あんたと瀬戸君の話をしてる子が何人かいたからね、何かイヤなこととか言われなかった?」


「ううん。私、今日は学校へ来たの早かったから、誰とも会わなかったよ」


本当は昇降口で瀬戸君と会って教室まで一緒に来たけどね。


今日は早く来て良かった。


いつもの時間に登校していたら、誰かしらに嫌味のひとつでも言われていたかもしれないな。


「誰にも会わなかったってことは、ずいぶん早く来たってこと?」


「うん、30分早く家を出たよ」


「30分!」


目を丸くして驚く香奈に私は頷いた。


「夏休みに入るまで早く家を出ようかと思ってるんだ」


「マジで?」


朝が弱い香奈からすれば考えられないのかも。


「早起きなんて私には到底ムリ!拷問に近いんだから」


よくできるよね、なんて香奈は感心した様子。


「だって、その方が朝から余計な神経を使わなくていいんだよ。夏休みに入ったら、私達のことなんて忘れちゃうと思うよ」


後1週間もしないうちに夏休みに入るんだ。


そうすれば、この騒動も収まるはず。


ううん、収まって欲しい!
< 97 / 297 >

この作品をシェア

pagetop