腹黒エリートが甘くてズルいんです
そんな理由を口にしてしまえば、二時間半我慢したことが無駄になる。

結局、『それじゃあ』と、まるで今まで遠慮していたかのような恥じらいを見せつつ、小さなブーケを作った。

『折角だから』という悪魔の呪文を唱えつつ、残っていた萎れかけの花も全部お節介な子持ち主婦がまとめて不格好なブーケを作り、あたしの引き出物の、紙袋に突っ込む。


い、ら、ねーーーーーーーーーーーーーー!!!
という言葉を音が出るくらいゴクンと飲み込み、お礼を言って、やっと解放される。


二次会の開催を知らせる、素人感たっぷりのビラは見なかったことにする。

スマホのディスプレイは午後四時を示していて、今から帰れば夕食は駅前のお気に入りのデリを買って家ででろんでろんの部屋着でゆっくり食べられる。

もう、今日は三日徹夜で働いたくらいの疲労感だから、食べずにシャワーを浴びたら寝てしまうかもしれない。

でも、それでもいい。とにかく、早く酸素が薄くなるようなこの場から、逃げ出したかった。

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