腹黒エリートが甘くてズルいんです
あたしが、今後の生き方について決心を固めた頃にはとっくにサユミの定型文のようなスピーチは終わり、締めの挨拶も終わり、気がつけば同じテーブルの既婚者達は嬉々としてテーブルに飾られていた生花を思い思いにブーケにし始めている。

会場側のスタッフさん達も手慣れたもので、透明のセロハンと、輪ゴムとをてきぱきと分けていく。


「どうぞー」

にこやかに差し出されても、あたしはこれから電車で帰るし、はっきり言って要らない。

薄々分かっていたけど、あたしの地元は結構な田舎なので引き出物も『重くて大きい方がいい』みたいな風潮が根強くて、既に忘れたふりして行きたいくらいの大きな紙袋があたしのお迎えを待っている。

「あ、結構です」

同じくらいにこやかに、努めて爽やかに断ると、「縁起物ですので」というスタッフさんより更に押しが強めに、同じテーブルの既婚者達が『折角だから貰いなよ』と口々に言ってくる。

あたしには、その、ちょっとした生花のブーケを刺す花瓶も持ち合わせていなければ、一緒に綺麗ねと言う相手もいない。
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