腹黒エリートが甘くてズルいんです
「いや、あの、ちょっとご相談というか何というか……」


もそもと喋るあたしに、食いぎみに先輩が喋り出す。


「あー、了解了解。田中出版と、一渓書店どっちがいい?」


……はい??

返ってきた言葉が余りに予想外で、ポカンと先輩の顔を見つめる。

こうしてみると、あのときは『結婚相手として70点』なんて脳内採点をした人だけど、日に焼けた顔が随分と凛々しく、本当に失礼だったと反省する。

なんて、全く違うことを考えてしまうほどに、言われた意味が分からない。


ポカンとするあたしに、ではなく、隣の由依に先輩が言う。


「おいおい、莉緒っち随分と強気じゃね? しょーがねーなー、秘蔵っ子の猪瀬商事、紹介するか。礼金高くつくからなっ」


何となく話が見えてきた。それは由依も同じだったようで、冷静につっこむ。


「出光先輩、飲み会やら合コンの斡旋じゃないですよ」


「え、まじ?!じゃあ逆に何?!」


心底驚いた表情を見せる先輩。
逆にってなんだ、逆にって。
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