腹黒エリートが甘くてズルいんです
「だって、別に由依、寂しがってなかったじゃん……?」


恐る恐る言葉を返す。あたし、何か間違っていたんだろうか?


「バカねー!!」

由依の思いの外大きな声にびくっと肩が揺れてしまった。
そんなあたしにはお構い無しに、ぐいっと綺麗な顔を近づけてくる。


「大好きな友達が、新たな道を行きたいって決意してるのを、自分が寂しいからなんて理由で足を引っ張る権利、あると思う?」


「決意というか、まだ迷っているからこその相談なんだけど……よかった。うん、なんかね、あたし、まだ迷ってるんだよね、本当は」


由依が引き留めるのを我慢してくれていたと知って何だか嬉しくなったなんて言えないけれど。


「行かないでって言って良いなら言うよ、勿論、何回でも」


そんな由依の言葉に、泣きそうになってしまうあたし。


「……なんだなんだおい、アツい友情だな」


茶化しながら、なぜか一緒に泣きそうになっている出光先輩。
やはりこの人はいい人なんだ。
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