腹黒エリートが甘くてズルいんです
「さーて……あのね、莉緒。いいこと教えてあげる。とにかく、なんとかして楽しく過ごせる魔法」


なにそれ、と思いつつも、由依の方を見る。
細い身体のラインが埋もれるようなオフホワイトのドルマンスリーブが、よく似合う。



「とりあえず、笑っとけ!」


……なにそれ。


「簡単だと思うでしょ? これが中々難しいのよ。感じの悪い男と喋るときも、つかみ所のない女子と喋るときも、むかつくおっさんと喋るときも、とりあえず、笑っておく!」


そうだね、合コンではなく飲み会だし、サユミの結婚式を思い出せば、『エリート商社マン、だけど全員おっさんの巻』もありうるし、どういう集まりだか分からないから、もしかして良い会社だけど全員女子かもしれないし。


とりあえず、楽しく過ごそう。

買ったショップの袋や着ていた服を整理して、いよいよ準備が整う。


鏡の中のあたしはメイクを直しても結局、可もなく不可もなくいつも通りで、ちょっとだけ安心した。
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