腹黒エリートが甘くてズルいんです
あ、そういえば。
目が覚めたら見知らぬ部屋で男子と二人きりだったというのに、全然そんな心配をしなかった。


「て、言うか、まずは……」


酒井くんが言いながら、椅子から立ち上がる。起き抜けなのにある程度イケメンが保たれているというのは、ベストな状態でもごく普通のあたしからすれば羨ましい限り。


「な、に?」


ちょっと真剣なその表情に身構えてしまう。あたし達、ただ笑いあうようなこと、しばらくしてないな。


「まずは、結婚おめでとう」


……はい?

耳を疑う。今、なんて?
どうしたどうした、酒井くん二日酔い?


「……誰が?」


精一杯、出た言葉はそれだけで。


「誰って……仲田が」


酒井くんも困ったように言ってくる。


「……誰と?」


「知らねぇよ!」


「……?」


「……?」


暫しの沈黙。


二人で顔を見合わせる。


「ちょっ……整理させて?」

先に口を開いたのは酒井くんで。
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