腹黒エリートが甘くてズルいんです
***


外は、とってもいい天気。
秋晴れで、お昼前なのに澄んでいるような空気がとても気持ちいい。


ごく自然に、酒井くんがあたしの手を取り隣を歩く。


「よーし、そろそろじゃんけんするか!」


「いや、別にあたし主張するほど食べたいものないけど……? いいよ、酒井くんの食べたいやつで」


あたしの言葉を、投げやりな台詞だと受け止めたらしく、酒井くんがキレ気味に言う。


「お前なー、何でもいいとか頭の悪いこと言うなよ! 絶対あるはずだ、食べたいもの。俺に遠慮とかなしな。いいぞ、昼からフルコースでも、あ、河豚とかでもいい!」


「いや、て言うか、手を離すのがもったいなくて……」



言ってから、しまったと思う。本音が駄々漏れ。何言ってるんだ、あたし!!
……でも、本当に。
もったいないと思ってしまったんだもん。自然と繋いだ手は、自然に離れてしまったあと、どうやって、繋げばいいのか分からないから。
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