腹黒エリートが甘くてズルいんです
そのうちに気がついてしまった。

話の面白い出光先輩はともかく、34歳独身、どうやら恋人はいないらしいというあたしの存在に皆が気を使っているらしいということに。


不自然なくらい、あたしの恋人の有無について触れてこないのだ。

聞けば、『うん、いないんだ』……シーン、みたいな空気感になるとでも思うのか……いや、あたしだってそれなりに周りに気を使わせない返答技術持っていますけどね。
でもまぁとにかく、腫れ物扱いされている自分に気付き、これはもうそっと退散が全員の幸せの為だ、と悟った。


周りに気まずい思いをさせてまでそこにとどまる理由なんてない。


由依が来る気配もないし、この後、松永物産の男子(推定20代)が到着して更に肩身が狭くなるのもキツイし。



……というわけで、抜け出したんだ。


よし、それじゃあそろそろ、と廊下に備えてあったベンチから重い腰を上げかけ、思い出す。

一応、礼儀もあるので出光先輩にだけはメッセージを送っておこう、と。


『飲みすぎたのでお先にすみません! もしも由依が来たらよろしくです』


うん、これならいいね、と画面を確認しながら立ち上がる。
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