金魚の見る夢


サヨナラも言えずに訪れる別れは心に鉛玉を残す。

だから、事有る毎にサヨナラを言う弱虫な私。

「サヨナラまた来年も飲むのだ。」

ってな具合。

愛してるぞぉと真奈美に抱きついて見る。

歩道にはまだ人がいて、こっち見てるけど構うもんか、この面覚えとけ。

そしたら、急に予想外の力で真奈美にぎゅぅってされた。

「あたしも、愛してるよん。」

ありゃ、キスされた。

うふふ、気持ちええ。

「お前ら大丈夫か?」

相澤が笑っている。

「妬くな相澤もこっちゃ来い。」

あはは、私、酔ってます。

居酒屋の後、何件行ったかな?

でも、もっとこうして居たい。

何でかな、今日は帰りたくない、なんてたちの悪い女みたいな事が頭よぎる。

くにゃりと口をwにして笑う奈々が一緒にいるみたいで。

それが、今だけの魔法みたいに思えて。

だけど、タクシーの集まる駅方面に向けて歩く。

明日を迎えなきゃ、何と無くでも良いから。

同じ所に居たくても、時間は過ぎていくから。

ああ、言葉が足りなくてもどかしい。

こんちくしょう。

相澤がタクシーを捕まえた。

「ほれ、みづき先に乗れ。」

タクシーに相澤が行き先を大雑把に告げ、私が細く補足する。

二人はまたタクシーの捕獲にかかる。

「バイバイ、また飲もう。」

窓を開けて手を振ると二人も振り返してくれる。

私は走りだしたタクシーのリアガラス越しに、二人が見えなくなるまで後ろを向いていた。
< 15 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop