潮風の香りに、君を思い出せ。

いい香りを覚えて

大地さんが言ったとおり、坂を下りて割とすぐ、海沿いの広い通りにあかりさんが働く店はあった。

横に広い二階建ての建物。二つの店がくっついていて、おしゃれな雑貨屋さんと隣はエステ兼ヘアサロンの看板が出ている。

目の前は駐車場になっていて、車の通りから少し引っ込んでいる。

海辺らしい開放的な間口で中まで見えるので、自転車で着いたら雑貨屋さんのカウンターにいた女の人が気づいた。

あれがあかりさんかな。

駐車場の端に自転車を停めると、「中にいるでかいのがあかり」と大地さんが行って、雑貨屋さんに入って行く。



「いらっしゃいませ」

「よう。ひさしぶり」

接客の挨拶をしてくれたあかりさんに構わず、他に誰もいないのを見て普通に声をかけている。

「どしたの大地。今日平日だよ」

「話せば長いから、まあそれはまた。この子七海ちゃん、サークルの後輩の三年生。これ、さっきも言ったけどあかり。俺の幼馴染」

「春日七海です、こんにちは」

言って頭を下げる。さっき香世子さんに怒られたからか、今回は最初に紹介してくれてよかった。

「こんにちは、ナナミちゃん。七つの海の子でしょ」

「え?」

連絡しないで来たんじゃなかった? メッセージとか入れてたのかな。

「お前になんか話したっけ?」

でも大地さんも驚いた声を出した。

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