花と光と奏で
花と光と奏で

光の雫

──イギリス

日本から約14時間後、俺は七聖と共にイギリスのバーミンガム空港に降り立った。



「……I got it…with thanks」

ピッ

七聖が“わかったよ。ありがとう”と言って、電話での会話を終わらせたのが、俺の耳に届いてきた。


「確認したら、やっぱり朝から出かけてるってさ」


俺に向き直りそう言った七聖の言葉に、“誰が?”なんて聞かずとも、それが彼女をさしていることは百も承知で、


「……行ってくる」


俺は彼女の所在をあの場合だと決めつけて、そう七聖に一言だけ告げた。


「ああ。頼むよ」


七聖もまた一言で返答し、薄く笑みを浮かべた。

だけど、

「迷子になっても迎えに行かないから、そのつもりで」

と続けて言われたことは、他人が聞けば薄情な言葉でも、俺にはそれが七聖からのエールにしか聞こえなくて、

「帰りは一人じゃないから」

と、俺も笑みを口元に浮かべた。


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