川之江くんは世話好き
今日から寮暮らし
教室の音が、声が

響く、響いて聞こえる

自分を蔑む声が

自分を除け者にする声が

響く、響く、響く…………

何故こうなった? 俺は何をした? 何がいけなかった?

…………そうか、この性格が悪いのか

他人に興味を持たない、自分の事を第一に考えるこの性格が――――――











「あ、瀬戸さん今日はバイトの日でしょ? このプリントは僕が運んでおくよ」

「え、あ……いいの?」

「いいよ、家の方、大変なんでしょ? 昨日言ってた」

「え、覚えて……」

「ああ、加藤さん彼氏さんとデートでしょ? 掃除はプリント運ぶついでにやっておくから行っておいでよ、待たせたら悪いよ?」

「ふええ、ど、どうして知ってるの?」

「昨日嬉しそうに話してたでしょ? 彼氏ができたって、それに今日の加藤さんはいつもより可愛くしてるからね」

「あ、ありがとうっ」

「どういたしまして、楽しんできてね」

「う、うん!」

「斎藤君、それ、ポストに出すの? もし良かったら出しておこうか? 丁度今日から寮暮らしでね、その帰りにポストがあるんだよ」

「お、いいのかい?」

「うん、模擬テスト、頑張ってね」

「ああ!」

「…………ねえ、田中くん」

「何だい、委員長こと瀬戸さん」

「川之江くんって……」

「うん、超が付くほどの世話好き」



川之江 薫(かわのえ かおる)、女みたいな名前以外はごくごく普通の高校生
今年入学したての高校一年で登校三日目、皆からつけられたあだ名は………

『せきくん』

世話好きの最初と最後をくっつけただけのアンチなあだ名である



「失礼しましたー」

「ご苦労様、気をつけて帰ってね」

「よし、プリントと掃除はオッケー、後は帰りにポストに寄るだけっと、ああ、それと寮母さんに持っていく物を買わないと」

新しい生活、楽しみだなぁ
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