川之江くんは世話好き
昔ながらの駄菓子屋さん、昔ながらの家
そんな路地を抜けた先にあるのが今日から僕の住む場所、川之江荘だ
川之江家当主である曾祖父の代に作られたそうで僕も一度来たことがあるみたいなんだけど正直殆ど覚えていない
「えーと、確かここら辺だったと思うんだけどな……」
「…………」
「道間違えたかなぁ」
「……ちょっと」
「いや、でも書いてもらった地図にはこの道が書いてあるしなあ」
「ちょっと!」
「やっぱりあってるのかなあ? うーん……よし、もう少し先にー…」
「話聞いてる!?」
僕は腕を掴まれた
そして、そのまま、綺麗な円を描くように―地面に叩きつけられた
「あぐっうっ!」
いきなりの出来事……
僕は、その時見た光景に心を奪われた、ような気がした
降り注ぐかのような桜の花弁とそれを照らす太陽がきらきらと輝いて視界の中心にどこか無愛想で、だけど見ていて飽きないような表情をした一人の女の子が居る……そんな光景を
「……邪魔」
「…………」
え、えええええ!
そんな横暴な……
女の子は僕のいた場所を通ってそのまま路地の奥へ進んでいった
「あ、僕は放置ですか……」
その後、何とか夜になる前に川之江荘に着いた、が……
いやいや、川之江荘は古き趣のある良い日本民家? と言うのだろうか……?
まあ所謂それっぽくて雰囲気も好きなのだが、好きなのだが!
「よいっしょ、よいっしょっ……」
「何で美男子が屋根に上ろうとしている!? そして何故素っ裸!」
「ん? あ~、もしかして君が今日からここに来るお隣さん?」
「すみません、場所間違えたみたいです、それと人違いです絶対」
「わあ、即答ー、お兄さん傷ついちゃうよー」
「一生傷ついたままでいてください、お願いします」
「これまた即答だねー、でもまた、それもイイかもー」
変態だ! 紛れもなく変態だ!
「あらあらまあまあ、薫くんじゃないの、遅かったねぇ」
「え?」
変態にばかり気を取られていたけどこんなに優しそうなお婆さん、居た……?
「あ、もしかして寮母さんですか?」
「そうねぇ、まあ管理人みたいな者ね、名前は柴田しばた 玲子れいこ、本当なら薫くんだけどね?」
「あ、あははは、その件はゆっくり考えますから」
「よろしくね、それはそうと、本当に遅かったね、もう少し遅かったら本田さんに探してきて貰おうかと思ってたところよ」
「あー……ご心配をお掛けしたみたいで……」
「いいのよ、無事なら、それより本田さんにお礼を言ってあげて? 彼に薫くんがまだ着かない事を教えたら着替えの最中に慌てて飛び出して屋根に上って見渡そうとしてたんだから」
「え……それって……」
「僕だよー」
「おわっ! え、ええ! やっぱりそうなの? うわごめんなさい、僕てっきり……」
「てっきり?」
「露出狂の変態がここら周辺の人に自分を曝け出そうとしていたのだとばかり」
「ああ、イイねその言い切りの良さ!」
「あ、じゃあよろしくお願いしますね、変態さん」
「僕、変態さんで固定?」
「嫌ですか?」
「いいえご褒美です!」
「あらあら、良かったわ、仲良くなれたみたいで」
「ははは……」
僕、ここでやっていけるんだろうか
★☆★☆★☆★☆★☆
「ここが、貴方の部屋よ」
そこには沢山の本が並ぶ木製の本棚があって簡素だけど決して小さくないベットがあって、窓から差し込む夕日の光が絨毯を照らして……兎に角すごく、綺麗だと思えた
「ふあぁー!」
「どうかしら、気に入って貰えた?」
「はい! とっても!」
「ふふ、良かったわ、そこはね貴方の曽祖父が自分の手で造り上げた部屋なの、何度怪我をしてもどれだけ建築が遅れても、その部屋だけは自分で造るんだって聞かなかったのよ?」
「玲子さんは、曽祖父の事を知ってるんですか?」
「……そうね、少し昔話でもしましょうか」
今から約四十年前、昭和五十二年ぐらいだったかしらね、貴方の曽祖父は一人の若い女性を施設から引き取ったの
でもその女性は表情を全く顔に出さなくてね、貴方の曽祖父以外の人は皆彼女を気味が悪いと近づかなかった
そんないつも道理のある日に貴方の曽祖父が女性に会わせたい人が居る、と言って女性を連れ出したの
女性はまた捨てられるんだと身構えていたのだけど連れてこられた場所は空地だった
そこで貴方の曽祖父はこう言ったの“ここに面白い奴らが集まる寮を作る! お前はそこでその面白い奴らの面倒を見てやってくれないか”ってね
女性はそこで何時ぶりになるかも分からない笑いを取り戻したの
そうして出来たのがこの、川之江荘
「少し長い話になっちゃったけど、貴方の曽祖父はとても立派な人だったって言う事ね」
「そうだったんですか……」
「あら大変、夕飯の支度の途中だったわ、それじゃあご飯ができたら呼ぶからその時に寮の皆を紹介するわね」
「あー、はい」
あの変態以外にどんな人が居るんだ?
さっきの話で面白い奴らって言ってたって事は……そういうことだよな
「あ、忘れてたわ、貴方の荷物は玄関を入ってすぐの廊下に置いてあるから悪いけど運んでおいてくれる?」
「ああ、はい分かりました、ありがとうございます」
「そうか、ここはひいじいちゃんが造った部屋か、何か落ち着くな…………っと荷物片づけなくっちゃ」
そんな路地を抜けた先にあるのが今日から僕の住む場所、川之江荘だ
川之江家当主である曾祖父の代に作られたそうで僕も一度来たことがあるみたいなんだけど正直殆ど覚えていない
「えーと、確かここら辺だったと思うんだけどな……」
「…………」
「道間違えたかなぁ」
「……ちょっと」
「いや、でも書いてもらった地図にはこの道が書いてあるしなあ」
「ちょっと!」
「やっぱりあってるのかなあ? うーん……よし、もう少し先にー…」
「話聞いてる!?」
僕は腕を掴まれた
そして、そのまま、綺麗な円を描くように―地面に叩きつけられた
「あぐっうっ!」
いきなりの出来事……
僕は、その時見た光景に心を奪われた、ような気がした
降り注ぐかのような桜の花弁とそれを照らす太陽がきらきらと輝いて視界の中心にどこか無愛想で、だけど見ていて飽きないような表情をした一人の女の子が居る……そんな光景を
「……邪魔」
「…………」
え、えええええ!
そんな横暴な……
女の子は僕のいた場所を通ってそのまま路地の奥へ進んでいった
「あ、僕は放置ですか……」
その後、何とか夜になる前に川之江荘に着いた、が……
いやいや、川之江荘は古き趣のある良い日本民家? と言うのだろうか……?
まあ所謂それっぽくて雰囲気も好きなのだが、好きなのだが!
「よいっしょ、よいっしょっ……」
「何で美男子が屋根に上ろうとしている!? そして何故素っ裸!」
「ん? あ~、もしかして君が今日からここに来るお隣さん?」
「すみません、場所間違えたみたいです、それと人違いです絶対」
「わあ、即答ー、お兄さん傷ついちゃうよー」
「一生傷ついたままでいてください、お願いします」
「これまた即答だねー、でもまた、それもイイかもー」
変態だ! 紛れもなく変態だ!
「あらあらまあまあ、薫くんじゃないの、遅かったねぇ」
「え?」
変態にばかり気を取られていたけどこんなに優しそうなお婆さん、居た……?
「あ、もしかして寮母さんですか?」
「そうねぇ、まあ管理人みたいな者ね、名前は柴田しばた 玲子れいこ、本当なら薫くんだけどね?」
「あ、あははは、その件はゆっくり考えますから」
「よろしくね、それはそうと、本当に遅かったね、もう少し遅かったら本田さんに探してきて貰おうかと思ってたところよ」
「あー……ご心配をお掛けしたみたいで……」
「いいのよ、無事なら、それより本田さんにお礼を言ってあげて? 彼に薫くんがまだ着かない事を教えたら着替えの最中に慌てて飛び出して屋根に上って見渡そうとしてたんだから」
「え……それって……」
「僕だよー」
「おわっ! え、ええ! やっぱりそうなの? うわごめんなさい、僕てっきり……」
「てっきり?」
「露出狂の変態がここら周辺の人に自分を曝け出そうとしていたのだとばかり」
「ああ、イイねその言い切りの良さ!」
「あ、じゃあよろしくお願いしますね、変態さん」
「僕、変態さんで固定?」
「嫌ですか?」
「いいえご褒美です!」
「あらあら、良かったわ、仲良くなれたみたいで」
「ははは……」
僕、ここでやっていけるんだろうか
★☆★☆★☆★☆★☆
「ここが、貴方の部屋よ」
そこには沢山の本が並ぶ木製の本棚があって簡素だけど決して小さくないベットがあって、窓から差し込む夕日の光が絨毯を照らして……兎に角すごく、綺麗だと思えた
「ふあぁー!」
「どうかしら、気に入って貰えた?」
「はい! とっても!」
「ふふ、良かったわ、そこはね貴方の曽祖父が自分の手で造り上げた部屋なの、何度怪我をしてもどれだけ建築が遅れても、その部屋だけは自分で造るんだって聞かなかったのよ?」
「玲子さんは、曽祖父の事を知ってるんですか?」
「……そうね、少し昔話でもしましょうか」
今から約四十年前、昭和五十二年ぐらいだったかしらね、貴方の曽祖父は一人の若い女性を施設から引き取ったの
でもその女性は表情を全く顔に出さなくてね、貴方の曽祖父以外の人は皆彼女を気味が悪いと近づかなかった
そんないつも道理のある日に貴方の曽祖父が女性に会わせたい人が居る、と言って女性を連れ出したの
女性はまた捨てられるんだと身構えていたのだけど連れてこられた場所は空地だった
そこで貴方の曽祖父はこう言ったの“ここに面白い奴らが集まる寮を作る! お前はそこでその面白い奴らの面倒を見てやってくれないか”ってね
女性はそこで何時ぶりになるかも分からない笑いを取り戻したの
そうして出来たのがこの、川之江荘
「少し長い話になっちゃったけど、貴方の曽祖父はとても立派な人だったって言う事ね」
「そうだったんですか……」
「あら大変、夕飯の支度の途中だったわ、それじゃあご飯ができたら呼ぶからその時に寮の皆を紹介するわね」
「あー、はい」
あの変態以外にどんな人が居るんだ?
さっきの話で面白い奴らって言ってたって事は……そういうことだよな
「あ、忘れてたわ、貴方の荷物は玄関を入ってすぐの廊下に置いてあるから悪いけど運んでおいてくれる?」
「ああ、はい分かりました、ありがとうございます」
「そうか、ここはひいじいちゃんが造った部屋か、何か落ち着くな…………っと荷物片づけなくっちゃ」