感染学校~死のウイルス~
「うん。人は楽しい事を思い浮かべると自然と眠ることができるんだって」


あたしはどこかで聞いた噂話を思い出してそう言った。


嘘か本当かわからないものだったけえど、楽しい話は気休めにもなる。


「そうなんだ?」


空音はほほ笑んでいた。


こんな絶望的な世界でも、目を閉じれば自分の家がある。


家の中にはお父さんとお母さんがいて、夕ご飯はオムライス。


暖かなご飯にトロリとした玉子が乗っていて、ケチャップでハートを描く。


「それ、いいね」


想像をそのまま口に出しているよ、空音がそう言った。


「あたしの家の夕飯はたらこパスタ。茹であがったばかりの麺にたらこが絡まってるの」


空音の言葉でパスタを想像してしまったあたしは、お腹を押さえた。


夕飯の想像は食欲が増すからしない方がよかったかもしれない。


だけど、気分は随分と落ち着いて来ていた。


空音の手のぬくもりがとても心地いい。


「愛莉、あたしなんだか眠れそう」


空音がそう言い、大きな欠伸を1つした。


つられてあたしも欠伸をする。


そして2人で目を閉じた。


明日には何かが変わっていますように。


そう、願って……。
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