秘めた想いが実るとき

***

「久々の再会に乾杯」

グラスをカチンと合わせ、ビールを飲む。

りっくんから連絡があり、金曜の夜、仕事終わりに会おうということになった。

駅で待ち合わせをし、りっくんのお気に入りの店に連れて行ってもらうことになった。
そして歩いていて、あれ?と思った。
駅からここまでは、私がよく仕事終わりに通る道だったから。

まさかそんな偶然はないよね、と思いながらも一抹の不安がよぎる。

そして、着いたのが『ダークムーン』だった。

今さら場所を変えたいとは言えず。

バーのドアを開け、店に足を踏み入れるとカウンターのなかにいた朔斗と目が合った。
その瞬間、目を見開き私を見る。

そして、その目はすぐに元に戻り「お好きな席へ」と促された。

自分の好きな人の店に元カレといるなんて気まず過ぎる。
まぁ、気まずいって思っているのは私だけなんだけど。

注文する時、朔斗は私に対しても敬語だった。
ひとりで来ていたら普通通り話してくれるのに。
私は客だと、ハッキリと線引きされた気がして寂しかった。



「へぇ、ミヤちゃん結婚したんだ」

「そうなの。式でついもらい泣きしちゃった」

りっくんと付き合うきっかけを作ってくれたのがミヤ。
ミヤの協力があって、私とりっくんは付き合えたから本当に感謝している。

世間話をしていると当時を思い出す。

りっくんは穏やかな性格で、付き合っている時は一度もケンカしたことがなかったんだよな、と。
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