飛べない翼
「さあ、どうなんでしょうかね。もう長いこと会っていませんし、跡も継ぎませんでしたしね。恨まれているかもしれません」


「…………」


私が黙ると、先生は再び話し出す。


「姉は不慮の事故で亡くなりました。……けれど、両親は殆ど気に留めず、僕を構いました。僕が何を言っても、聞いてはくれなかった……。それが、辛かったんです」


「……それで、声を……?」


先生は静かに頷き、言う。


「【心因性失声症】というものでした。まあ、翌年には治っていましたが……。その代わり、僕は自分の話し方を、忘れました」
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