派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 



 渚に手をつかまれたまま、コンビニに行くと、あのときの店員、仲間が外のゴミ箱を片付けていた。

 こちらを見て、
「あれっ?
 お嬢ちゃん、次々新しいイケメン連れてきてー」
と悪気もなくカラッと言ってくる。

 えーと……。

 まだ手を離さない渚が笑ったまま訊いてきた。

「誰だ、俺以外のイケメンって」

 自分を早速イケメンに入れてるところがなんなんですが。

「……脇田さんですよ。
 此処で助けてもらったって……ああ、言ってなかったでしたっけ?」

 聞いてない、と言う。

 そういえば、脇田さんが自己保身のために言わなかったと言ってたな、と気づいたが、此処であらぬ疑いをかけられるより、脇田さん的にもいいだろうと思い、此処で蛍光灯が落ちてきた話をしゃべった。

「脇田の怪我も此処だったのか。
 お前の怪我もそのときか、見せてみろ」

 脇田はあっという間に、小さな絆創膏に貼り替え、怪我を感じさせなかったので、なんとなく治っているような雰囲気になっていたが、やはり、そうではないようだった。
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