派遣社員の秘め事 ~秘めるつもりはないんですが~
『さっきの撤回していいか?』
と言ってきた渚の顔を思い出し、蓮は笑う。
彼が置いていった薔薇の花を拾い、花瓶として使っているデカンタに活けて、キッチンに飾った。
風呂に入ろうとして、鼻歌を歌っていた自分に気づき、誰も居ないのに、咳払いして止める。
なんでだろうな。
あんな勝手な人なのに。
言動がいちいちおかしくて……
そして、それを可愛らしいとか、ちょっと思ってしまう。
いかんいかん、と蓮は気を引き締める。
そもそも、あんな人と結婚したら、また、元の生活に逆戻りだしな。
未来が居たら、
『いやいやいや。
僕が運んでるご飯食べてる時点で、もう間違ってるから』
そう言ってくるだろうな、と湯船に浸かりながら、ちょっと思った。