派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 



「脇田さん」
と廊下に出た脇田を追った蓮は、彼を呼び止めた。

「あの、本当に、日曜日、大丈夫ですよ。
 私の方は別に」
と言うと、脇田は、いつものように穏やかに笑い、

「いや、いいよ。
 確かに渚に休みは必要だ。

 それに……あいつ、たぶん、自分から誘って、デートとか初めてだから」
と言ってくる。

「えっ。
 あの顔でですか」

「顔、関係ないでしょ」
と脇田は笑う。

「強引な奴だし、訳わかんないこと言い出したりもするけど。
 温かい目で見守って、やさしくしてやってね」

「はい。
 ああでも、私も初デートなので。

 見守るもなにも、デートってよくわかんないんですけど」
と言うと、えっ? と言われる。

「秋津さん、今まで誰ともデートしたことないの?」

 蓮は、あー、と渋い顔をし、
「まあ……私はデートだと思って出かけたことはありません」
と言った。

「はは……そう」
と脇田は微妙な笑顔を浮かべる。
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