派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「まあいいや。
 渚をよろしくね」
と行こうとした脇田の手首を蓮はつかんだ。

 脇田が足を止め、振り返る。

「あの、手、大丈夫ですか?
 あれからなんともなさそうにしてるけど、私の傷もまだ治ってないくらいだから、脇田さんはまだ痛いんじゃないかと思って」

「……大丈夫だよ」
と言い、手のひらを少しだけ広げて見せる。

 小さな絆創膏が貼ってあった。

「なにか出来ることがあったら、言ってくださいね」

「ありがとう」
と言い、脇田は行ってしまう。

 ほんとによく出来た人だな、と思って見送った。

 痛くないはずはないと思うんだが。


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