派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「今日の記念にやろう」

「いや、待ってください。
 私にこれくれたら、貴方はどうやって帰るんですか」

「電車?
 タクシーか?」
と首を捻ったあとで、

「いや、お前が送ってくれればいいんだろうが」
と言ってくる。

 まあ、そりゃそうなのだが。

 渚の家に行くなんて、結婚の挨拶に行くみたいで、なんだかやだな、と思ってしまう。

「いえあの、車はいりません。
 それに、このマンション、電動自動車、充電するとこないんで」

「じゃあ、充電設備を此処につけさせよう。

 いや、いいのか。
 お前、俺と結婚したら、此処出るだろうしな」

 勝手に決めないでください……と思っていると、渚がドアを開けてくれる。

 待たせても悪いので、
「あ、ありがとうございます」
と乗り込んだ。

 車を一度出そうとして、渚は止める。

「おお、そうだ」
と言い後部座席からなにかを出してきたと思ったら、ネックレスでも入っていそうな箱だった。

 だが、中から出てきたのは、ティアラだった。
< 155 / 383 >

この作品をシェア

pagetop