派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 



『起きろっ、蓮。
 デートだぞっ』

 日曜の朝、渚が電話をかけてきた。

 外に出たら、鬼コーチが竹刀を持って立っているとしか思えない勢いだ。

 その迫力に、デートってなんだっけな?
 なにか体育会系なものだったろうか、と思ってしまう。

 眠い目を擦り、下に下りると、玄関脇の駐車スペースに渚は居た。
 赤い電気自動車が止まっている。

 未来的なフォルムだな、とその車を見て思う。

 勝手に、馬鹿でかい小回りの利かなさそうな車に乗っているんだと思っていた。

 よく聞いてみたら、そんな車もあるらしいのだが、
「蓮様はこういうのがお好きだと思います」
と言う徳田の進言により、今日の車が決まったようだった。

「私、これ、乗ってみたかったんです」
と言うと、

「じゃあ、やる」
と言ってくる。

 ……はい?
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