派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「なんだ。
 気に入らなかったのか。

 じゃあ、店に行って替えてもらおうか」

「そうじゃなくてですねーっ。
 どうすんですか、これっ」

「式で使えばいいだろう」

「いやあの、式はレンタルでいいんじゃ……」

「うちの爺さん、レンタルとか嫌いなんだ」

 そんなにジジイの意見が聞きたきゃ、そのジジイと結婚しろっ。

 じゃなくてっ。
 結婚するとか言ってないしっ。

 だが、結婚はもう渚の中では決定らしく、そこには触れずに、ティアラのことだけを尋ねてくる。

「どうする?
 替えるか?」

「いえ……いいです」
と蓮はもう諦めて、その小さなティアラを朝の日差しに翳してみた。

 キラキラ光って綺麗だ。

 スワロフスキーの方が式場ではゴージャスに見えるとかいう話もあるが、やはり、本物の輝きは別格だな、と思っていた。

「そうだ、姫。
 たくさんドレスが着られて、ティアラもつけられるところに連れてってやろうか」

「嫌です」
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