派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 どう考えても、式のドレス選びとしか思えないのだが。

「私はもっと、素朴なデートがしてみたいです」
と言うと、渚は眉をひそめ、

「素朴なデート?

 ……って、なにするんだ?」
と訊いてくる。

「そ、それが実は、私にも……」

 脇田たちが聞いていたら、阿呆なカップルだ、と呟くところだろう。

 うーん、と唸った蓮は、
「二人で、波止場を歩いて、ハンバーガーを食べるとか」
と言ってみた。

 渚が鼻で笑う。

「イメージが貧困だな」

「じゃあ、貴方、なにかあるんですか?」
と揉めている間に、波止場といったせいか、普通に海辺のレストランに着いた。

「なにも思い浮かばん。
 此処で手を打て」
と渚が言ってくる。

「いや、何処でもいいんですけどね」
と多少投げやりに言うと、

「お前、行きたいところはないのか。
 今日はお前の行きたいところに行って、したいことをさせてやる」
と言ってくる。
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