派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「ありませんけど、なにか?」
とつい、喧嘩腰に言ってしまう。

「じゃ、鍵、おばさんに返しとくから心配しないで。
 僕に持ってて欲しいんなら、コビー作るけど?」
と笑って言ってくる。

 ……結構です。

 未来は、じゃあ、とさっさと帰ってしまった。

 今日はなんだかなー。
 そういえば、アイス食べそびれたし、と思いながら、ご飯を食べ、テレビを見ながら、うとうととする。

 未来、ご飯持ってきてくれるより、一緒に食べてくれる方がいいのにな、とぼんやり思った。

 一人暮らし、したくてしてるんだけど、やっぱりちょっと寂しいな。

 そう思ったとき、ふっと駐車場で煙草を吸っていた男を思い出した。

『お前、俺の子を産んでみるか?』

 いやいやいや。
 幾らひとりが嫌だからって、いきなり知らない人に子供を産めとか言われても。

 でも……
 子供かあ。

 ちょっと欲しいかな。

 あの渚とかいう人の子供なら、きっと綺麗な顔した子供が産まれるだろう。

 頭も良さそうだし、と思ったあとで、いやいやいや、と思う。

 これじゃ、
『いい遺伝子だ』
とか言う渚と一緒の発想だよ、と思ったからだ。

 ロクなもんじゃないな、あの男、と思いながら、一人暮らしの気楽さで、そのまま寝てしまった。


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