派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 親切なのかもしれないが、今なにを言われても、孕まされようとしているとしか受け取れない。

 探しに来たボールペンの箱を手に、
「じゃ、失礼しますっ」
と逃げ出そうとすると、腕を掴まれた。

「な、なんなんですかっ」

 っていうか、その顔で近寄らないでっ。
 心臓に悪いからっ、と思っていると、
「電話番号」
と手を差し出してくる。

「は?」

「寄越せ、お前の電話番号」
「なんでですか」

「……なんで?」
と睨まれる。

「変わったばかりで覚えてません。
 それに、借金の件で連絡を取りたいのなら、貴方の電話番号を教えてくださればいいのでは?」

「お前、かけてくるのか?」
と問われ、かけますともっ、と笑顔を作る。

 胡散臭げに見ていた渚だったが、
「よし、教えてやろう。
 手を貸せ」
と言い出す。

 え? 手? と思っていると、その辺から勝手に油性マジックを取り、蓋を片手で小器用に開けながら、
「貸さないのなら、額に書くぞ」
と言ってくる。

 ひいっ、と思いながら、渚につかまれていない方の手を差し出した。
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