派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
「いや、急かしちゃって悪かったねと思って。
 僕が何処の部署か訊いてあげようと思ったんだけど、誰も居なかったよ」

「……そ、そうなんですか?」

 そういえば、いつも人が居ないところでしか会わないし。

 あの男、実はこの会社に憑いてる地縛霊か、座敷童なんじゃ、と思ってしまった。

 人の考えを先へ先へと読むしな。

 そのわりに私が嫌がっていることは伝わっていないようだが……。

「そうだ。
 浦島さんも知りませんか?

 私、社食で小銭を借りた男性社員の方を探してるんですけど。

 えーと、名字がわからないんですけど、なんとか渚とかって言う」

「渚ねえ。
 男の人にしては、珍しい名前だけど。

 今どきは、よくある名前なのかな。

 でも、居たかしら、そんな社員?」

 支社から帰ってきた人とか、技術系の派遣の人とかかしら? と葉子は首を傾げる。

「業者の人とか、仕事で来た他社の人も社食に来るからねえ」

「そうですか」
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