派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~




「またなんか揉めてますね」

 閉まっている社長室の扉を見ながら、浦島がパソコンのディスブレスから顔を上げ笑う。

 傍目に見てる分には、まあ、微笑ましいカップルだ、と脇田は思った。

『人の正体ってわからないよね』

 そう言った自分の言葉を思い出す。

 社長室の中ではまだなにか蓮がわめいていた。

 渚は、蓮の過去を洗えと言ったことを彼女に知られたくないようだった。

 らしくもなく、本人に問いただす勇気がなかったことが、恥ずかしいからかもしれない。

 いっそ、バラしてやろうかと思ったが、余計に愛が深まるだけのような気がして、やめておいた。

 秋津和博のことは、ちょっと調べたらすぐにわかりそうだが。

 蓮は、和博には気はないようだったから、渚が引っかかっているのは、誰か違う男の存在だろうと思う。

 一番怪しいのは、前の会社だな、と思った。

 っていうか、調べて、本当になにか出てきたら、どうしたらいいんだろう。
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