派遣社員の秘め事  ~秘めるつもりはないんですが~
 




 仕事終わりに、また社食に行ったが、渚は居なかった。

 代わりに、営業の人たちが、珈琲を飲みながら、なにか打ち合わせていたので、軽く頭を下げる。

 アイスの自動販売機の前に立ち、どれにしようかな? と悩む。

 渚に買ってもらった……いや、金は返せと言われているが……、アイスは、まだ冷凍庫の中だが。

 なんだか一日一個、違うアイスを、という決まりが自分の中で出来ているので、なんとなく新しいのを買いに来てしまったのだ。

 もし、渚が居たら、お金を返そうかなと思ったのもある。

 ……なんか、財布持ってるときには現れないな、あの人、と思いながら、階段で一人アイスを食べ、会社を出た。

 前の会社じゃ、十時に帰ることもザラだったので、なんだか時間を持て余してしまう。

 会社の周りでショッピングをすることにした。

 夕日を見ながら、昔は明るいうちに帰ってみたいとか思ってたけど、なんか寂しいもんだな、とぼんやり思う。

 お金もないのに、つい服を買ってしまった。

 その服の入った無駄に大きな紙袋を手に、会社の近くのコンビニに行くと、熱心にスイーツを眺めている男が居た。

 一際大きいので目につく。

 脇田だ。
< 28 / 383 >

この作品をシェア

pagetop